コンピュータ画家アーロンの誕生―芸術創造のプログラミング

コンピュータ画家アーロンの誕生―芸術創造のプログラミングの詳細

コンピュータ画家、と言う耳慣れないフレーズ。それはコンピュータを使う画家ではなく、コンピュータそのものが画家なのだ。正確には、こちらは人間の画家、ハロルド・コーエンが生み出した「アーロン」と言う名のプログラムがその「コンピュータ画家」である。一般的なコンピュータ・グラフィックスのイメージは無機質な図形が組み合わさって出来た幾何学的なものか、あるいはハリウッド映画に良く使われるような現実の物体の表層のシミュレーション（「の」が多い！）だろう。しかし、アーロンはそれらとは決定的に違う。アーロンは現実(仮想であるかは別として)のシミュレーションは行わない。人間や草花と言ったモチーフを、極めて抽象的に「理解」し、「絵」として表現する。その結果、人間はプログラムをスタートさせるだけで、コンピュータの画面には人間が描いたとしか思えない「人間的な」絵が出来上がっていると言う寸法だ。それは「人間的な絵」をアーロンが理解しているのではなく、人間の認知構造がプログラムに組み込まれているからなのだ。ついにはアーロンは絵の具を混ぜ、筆を執ってキャンパスに絵を描き始めた。人間の「メタ芸術家」がプログラムの「芸術家」を作り出すという衝撃。アーロンとはいったい何者なのか？この大変興味深い問題に筆者はアーロンと言う存在とハロルド・コーエンと言う芸術家の両面から深く切り込んで行く。面白い。